大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(く)45号 決定

被告人 高見沢博

〔抄 録〕

よつて按ずるに、原審が被告人吉田忠作に対する窃盗等被告事件について、その弁護人である抗告人の保釈請求に対し、昭和二十九年五月十日被告人には刑事訴訟法第八十九条第三号及び第四号に該当する事由の存することを理由として右請求を却下したことは取寄に係る右被告事件記録により明らかなところである。ところでまず刑事訴訟法第八十九条第三号にいう「常習として」というのは常習性が犯罪の構成要件となつている場合のみならず、当該犯行について犯罪を反覆する習性が客観的に認められる場合を指すものと解すべきであつて、犯罪の性質、態様、環境等から右の習性が認められるならば、前に同種の犯罪を繰り返し行つている場合は勿論のこと、ただそれが最初の犯行であつても、又当該犯行後同種の犯行が中絶している場合であつても、当該犯行を目して常習として、犯したものといつて差し支えないものというべきである。記録によれば被告人に対する勾留原因たる被疑事実は、「鈴木早と共謀の上、昭和二十五年十一月二十二日午前一時頃埼玉県南埼玉郡大沢町高畑三千百八十七番地島田正吉方において同人所有の現金二万八千三百円位及び鰹節二十本位を窃取した」というのであつて、この窃盗犯罪について昭和二十九年二月九日起訴された後、同年四月二十日更に右鈴木と共謀して昭和二十五年春頃から昭和二十七年一月十五日頃迄の(追起訴状の記載によれば終期を同年十一月五日頃とあるもその添附の犯罪一覧表によれば一月十五日頃が正当であること所論の指摘するとおりである)四十余回に及ぶ略々同一性質同一態様の窃盗犯罪について追起訴されているのである。従つて被告人の本件犯行容疑は前に述べた常習性の現れと認めるに難くないのである。従つてかかる窃盗の常習性を有する被告人が、たとえ所論のとおり過去二年有余正業につき同種の犯行をしなかつたからとて更に同種の犯行を繰り返すおそれなしとしないのであつてこれ被告人を勾留する必要のある所以である。次に右法条第四号の「罪証を隠滅する」というのは、単に物証に限らず人証についても積極的にその取調を不可能ならしめたり反対証拠を作為したりする場合は勿論、消極的に公判開廷を不可能ならしめる目的で故意に出頭しないで証人の死亡その他公判への召喚を不能ならしめる事故の発生を待つとか物証の自然の散逸を待つような態度をも含まれるものと解すべきである。右記録によれば、本件起訴にかかる窃盗の犯行容疑はいずれも起訴前二年乃至四年以前のものであることは所論のとおりであるけれども、被告人は、原審法廷において犯行の半分以上(特に被害物件の点について)を否認しており、事件は未だ審理中に属し、且つ共犯者である鈴木早も相被告人として審理を受けているのであるから若し被告人が保釈となつた場合において敍上意味における証拠隠滅がなされないと断言することはできないわけである。従つてこのような場合においては右法条にいわゆる被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときに該当すると解するのが相当であると思料される。

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